One's Sound

shigy65.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2015年 07月 08日

夜のガスパール

その日は午後からときどき小雨が降るような休日でしたが、
夕方コンサートホール近くのパーキングへ入ったときには歩くには傘が必要なほどでした

午前中家を出るころから傘を持っていこうと思っていたのですがせっかくのコンサートに行くのに今使っている傘は少々くたびれ過ぎ

小奇麗な恰好をした機会に傘も新しいのをおろすことにしました

雨が降っているということは上を見るともちろん雲りそら
当然そんなに明るくはありませんね

新しい傘をさして歩いてみたらこれまでよりも明るく感じたのは古い傘がくすんでいたせいだったのでしょうか
それとも新調した洋服を着て出かけた時の少し楽しい気分がそのように感じさせたのでしょうか

d0192112_21105923.jpg
青葉台フィリアホールでのその日の公演は三浦友理枝さんのラヴェルピアノ作品の演奏会です
d0192112_20303632.jpg
今回は座席がステージ向かって左の2階・No.14 S席
はじめての2階席へ座ってみると演奏者の右斜め後ろの位置で、
私の左隣りNo.13から後方がちょうど奏者の運指が良くわかる席になります
d0192112_20302433.jpg
ホールに入った際、調律師が作業をしていましたが、
ホール後方から指定席までゆっくり歩きながらその音を聴いているとやはり同じ音階でも濃淡が交互に現れるのはとても興味深かったです

私の席は音が濃く聴こえるポイントです
高音部が少し耳にきつく感じられましたが全体的には良い方ではないか思われます
d0192112_20294425.jpg
この日の演奏会は「ラヴェル・ピアノ作品全曲演奏(全2夜)」と題した公演のうちの初日です

ステージにあらわれた三浦 友理枝さんを目にしたときの印象は「容姿端麗」「光彩奪目」とでも云いましょうか
パンフレットなどにみられる写真そのままの方でした

これで演奏が素晴らしかったら云うことなしですね

さて始まりました
一聴してラヴェルだとわかる響きがホールに広がりはじめます
早いパッセージは流れる小川のような音のあらわれ方でとても心地よい響きです
d0192112_21105144.jpg
そして2曲目の「高雅で感傷的なワルツ」(Valses nobles et sentimentales)
顔の表情以外の全ての動きがわかるこの座席だったからこそわかったことなのかもしれません
一見して華奢にみえるひとが弾いているとはとても思えないほどダイナミックな演奏です
広範囲な鍵盤を素早く正確にそして力強く弾いているその様を見てとても驚いたのですが、
その後驚きが笑みに変わっていきました

ところで私は比較的ラヴェルのピアノ作品は好んで聴いています
オーディオで聴くラヴェルのピアノはどちらかというと(バッハなどとは違い)複雑すぎるほどの和音のせいで技巧的な面は想像できず、
そのせいで素直に楽曲が表現する音楽の世界に入りこめていました

しかしそのラベルの音世界を表現する彼女の演奏を観て思ったのは、
複雑でダイナミックなその動きはそれさえも芸術作品と云えるほどの美しさのということです
d0192112_21191949.jpg
「夜のガスパール」
タイトルにもあるラヴェルの代表的な作品
この作品を好むラヴェルファンは多いのではないでしょうか

斯くいう私もそのひとりです
このコンサートに来たのもこの楽曲が聴きたかったからです

過去にもブログに記載したかと記憶していますがこの作品の題材となったベルトラン(Louis 'Aloysius' Jacques Napoléon Bertrand)の散文詩は、
二十歳のころにラヴェルの同名曲を聴いてとてもつよい衝撃を受けすぐに書店から取り寄せました

それまで現代音楽や抽象画などの類は全く未経験だった私にはとても理解できるものではありませんでした
(ベルトラン34歳の遺作)
唯一の救いはラヴェルのその音楽だけは不思議な印象を持っていながらも何故か惹きつけられるものがあったということです

また作品を読まなくともそこに広がる想像の世界の中の情景は当時から今まで変わっていません

1、オンディーヌ[Ondine]
2、絞首台 [Le gibet]
3、スカルボ [Scarbo]

特に「絞首台」のイメージの再現はライブのせいかこれまで聴いてきたなかでもより現実(?)に近く、
詩の内容からは程遠いかもしれない強いノスタルジア(この場合ノスタルジーと云った方が正しい?のでしょう)を感じられます

この時折波のように訪れる風の最後には向きが変わったせいで消えていく一定の間隔で鳴りるづける「鐘の音」を表現しているのはB♭のオクターブで表現されています
それは目の前にあるもの(幻想)とは別の空間(これも幻聴?)で一つ一つ刻んでいきます

しかし三浦さんの演奏を見てみると鐘の音が幻想の中に埋もれているかのように見えます
鐘の音の上ですべての出来事が表現されていてこれはイメージとは正反対に思え大変興味深く見ていました

ラストのスカルボ
そしてラ・ヴァルス(La Valse)ではとても素晴らしいテクニックと息をのむほどのダイナミックな演奏を聴かせ、
演奏が終わったあと拍手喝采で会場全体が歓喜の渦に包まれました

ピアノはヤマハでした

この日のために6月に4台用意してもらった中から選んだというピアノ
しかも選んだ基準は「夜のガスパール」と云うだけあってこの日の最高パフォーマンスは間違いなくこれでしたね

第2夜は9月26日です
第1夜はところどころ席も空いているようでしたがこの評判を聞けば第2夜は観客も増えることでしょう

休憩時間にロビーで肩をたたかれました
振り返ったらそこには横浜のvafanさんがおられました
奥様と仲良くコンサートにいらしていたようです

訊くところによると9月のチケットは未だ購入されていないようでしたが必ずいらっしゃるとのことです

第1夜のvafanさんのご感想は如何なものでしょうか

最後に三浦さんのことを調べていてとても興味深いことを知りました
d0192112_21135983.jpg
彼女がフェリス女学院中等部の頃に「アマチュア無線クラブ」に所属していたそうですが、
その半年という短い期間に三級アマチュア無線技士の免許を取得したとのこと

1級から4級まである中趣味程度であれば4級で十分なようですがその一つ上の級まで取得したことになります
3級はモールス通信が出来るということなので彼女はモールス信号の聞き取りが出来るのですね

また違うこのような一面があるとはなんともチャーミングです

9月が楽しみです


by pat_mthny7205 | 2015-07-08 19:13 | concert | Comments(2)
Commented by 横浜のvafan at 2015-07-09 21:30 x
pat_mthny7205さん、こんばんは。

先日は、来られてるとは思っていませんでしたので、びっくりしました。

pat_mthny7205さんは、20歳の頃からラヴェルを聴かれていたのですか。ジャズの香りがしますものね。このライブまで、私が知っているのはボレロ、亡き王女のためのパヴァーヌくらいでした。

事前に買った三浦さんのCDに、夜のガスパールは入ってませんでしたが、この日一番印象に残りました。第2夜も、秋の再会も楽しみにしています。
Commented by pat_mthny7205 at 2015-07-10 20:49
> 横浜のvafanさん コメント有難うございます
この夜の演奏は素晴らしかったですね
演奏技術も素晴らしくまた解釈も私には違和感がなく感じられとても良いコンサートだったと云えます
会場のお客さんがとても静かに聴いていたことを忘れてはいけませんね
最近は(アブデル・ラーマン)エル・バシャのラヴェルを聴いています
三浦さんの演奏を多少遅くした感じに思えます
それを考えると早いパッセージの部分も三浦さんのスピードは全く落ちるようなことがなかったですね
ドキドキして観ていたのを思い出しました
また9月にお会いできるのを楽しみにしています


<< アナログ盤で音楽を聴くための準備      パン屋さん >>